ログハウスに限らず建物にはメンテナンスが必要ですが、木材を素材のまま大量に使用するログハウスなど木の家では、ログ材を健康的に維持させるため、木材の収縮や防腐防蟻、他の建材との取付部分など、施工後の点検と補修が特に必要になります。
建設地による気候や、使用する樹種、建物の形状の違いなどでも、補修時期がかわりますが、まめに点検し不具合箇所は遅滞なく補修することが、ログハウスを長持ちさせるため大切なことになります。
● 季節による木材の点検
- 4月 白蟻の活動期に入るので注意する。
- 6月 気温・湿度が高くなるので防カビに注意し、窓開けを行うなどして換気に努める。
- 12月 暖房に伴うログのヤニ清掃を行う。
・樹液のしみ出しを取り除く方法- 厚紙、金属板、薄板などでかき取る
- 有機溶剤をしみこませた布などで拭き取る
● 木材の乾燥収縮に伴う点検や調整など
- 大断面丸太材などの場合は、収縮に伴う側板の調整は、丸太材などが収縮後調整
- チンキング剤で丸太材をコーキング
チンキングは北米のログハウスなどで見られるハンドカットログのグルーブやノッチ周りの隙間を埋めて風、砂、虫、外気等の侵入を防ぐ為のログハウス特有の工法で、丸太同士の間は、丸太自身のネジレから来る隙間が生じ、隙間の全てを専用のコーキング剤で完璧にシールしなければなりません。
ログ材専用のコーキングとしてチンキング剤(ログジャム)は、ログの伸縮に対応し、高断熱・高気密なログハウスに保ちます。
※ログハウスの精度にもよって「木材の通気をさえぎるようなコーキングは無いほうが良い」と言った意見もあり、メンテナンス実施店とご相談下さい。
- チンキング剤で丸太材をコーキング
- ログ材などの干割れの状況を見て、防腐・防蟻の点検
- 断熱材・塗装などの点検
- 枠廻り・ドアー廻り、階段・柱下・柱頭ジャッキ・通しボルト
- 通しボルトの初期締め直し時期の目安
- 築1か月
- 築3ヶ月後
- 築6ヶ月後
- 築1年後
- 築2年後
- 築3年後
- 柱頭ジャッキ(スクリュージャッキ)
- 築2~5年後 ※乾燥収縮終了後
※乾燥収縮に伴う点検や調整は、樹種や形状、施工時の含水率によって変ってきます。
- 築2~5年後 ※乾燥収縮終了後
- 通しボルトの初期締め直し時期の目安
● カビ対策
ログハウスの用途は別荘が多く、建物の廻りに樹木で覆われている場合が多く外壁や通気の悪い建物の内壁のログにカビが生える悩みがあります。
- 予防方法
- 建物周囲の枝、草、及び、屋根上はできるだけ木の枝を払い風通しをよくする
- 別荘の内部については、窓を開けて月に最低1~2回の空気の入れ替え
- 特に発生する室
- 浴室、脱衣洗面室、地下倉庫
- 北側の部屋、押し入れ、納戸、トイレ、収納庫、床下、台所、高湿度の室
- 木部防カビ塗装
- 新設時の塗装方法に合わせ、防カビのオイルスティン、スーパーワニス、クリヤラッカー、ポリウレタンクリヤ、調合ペイントをそれぞれ塗布(2回塗)
- 畳、カーペット、タイルなどは防カビ剤入りの洗剤を使用
● 外壁の塗装
- 木材保存薬剤を現場処理した場合の効力は内陸の普通地域でも、5~6年に一度の塗り替えが理想
- 山岳など風雨の厳しい場所や海岸近くの潮風の当たる場所では、3年ぐらいに一度の塗り替えが理想
※10年相当の耐久試験が確認されているDIY塗装できる超耐候性撥水剤も販売されるようになりました。
● 白アリ防虫対策
白アリ木材を食い尽くす害虫として知られていますが、建物の虫害としてキクイムシや、木の腐朽などにも考慮する必要があるので、ログハウスを保護するには、防腐と防蟻対策を合わせて行うことが大切です。
木材保護剤には、表面処理用のものが各メーカーから販売されておりますが、今までの農薬系のシロアリ駆除剤に代わり日本でも新たに発売されているホウ酸塩防腐防蟻剤をお勧めします。
素人でも安心安全に使用することができる「ティンボアPCO」は、低価格で防腐防蟻処理ができ、発生したカビを除去するためカビ取り強化剤を入れて処理することができます。
塗装方法には、はけ塗り、吹き付け塗り、ローラーブラシ塗りなどがあり、丸ログなどは、はけ塗りが一般的で、胸より高い位置では脚立などを利用しますが、小バケツの使用すると便利です。
● 水廻り
水廻りの中で最も湿害に浸されやすいのが浴室・洗面所で、土台部分から上をログ積みむき出し仕上げとした場合は、とくにメンテナンスに注意をはらう必要があり、定期的に防腐・防蟻塗装の他に木材用の防水材を塗布します。
浴室は湿度が高いため、すぐにカビが発生し、カビだらけになり、浴槽を木製とした場合は、まめに手入れをする必要があり、特に注意が必要です。
● テラス・デッキ廻り
ログハウスのテラスやデッキは屋根や庇がない場合が多く、雨が降ったり、夜露が降りてぬれることが多く、この繰り返しでログや木材を早く腐らせます。
デッキ材には、加圧注入処理や、耐朽性の大きなヒノキやベイヒバなどを使用しますが、状況を見ながら防腐や撥水剤を3年くらいを目安に塗装する必要があります。
● メンテナンスの少ないログづくり
無垢の木でつくられるログハウスでは、木の状態を健康に保つためメンテナンスが不可欠だと思われますが、ログハウスの種類や形状、木材の乾燥状態などによって、かなり異なることを見てきました。よりメンテナンスの少ないログハウスづくりをまとめてみましたので、これからログハウスを建設しようと考えられている方はご参考にしてください。
- 良質な木材を選び、防腐防蟻や耐水処理の少ない維持管理
- 乾燥状態が良い
- 防虫効果が強い
- 耐水効果が
- ログ材の形状や精度
- 手で加工する丸ログは、施工者の経験により材料選びから加工精度がかわる
- 機械加工のマシンカットの精度は高い
- マシンカットの2枚の木材を背合わせしたラミネートログは狂いが少ないが接着のための異物が入ることを認識
- ログ組の精度を着目
- 1枚実より2枚実の方が精度が高い
- ログの交差部の加工方法や精度
- 無駄な建設費に思われがちな造り方でも、建物の維持管理などに有利になる点を再検討
- 基礎を高くし、防蟻効果を高める
※床下の通気や、設備配管のメンテナンスもしやすい - ログの交差部の加工方法や精度
※夏の日差しが直接外壁をあたる熱量が減るため、涼しくすごせる → ブラインドと同じ効果
- 基礎を高くし、防蟻効果を高める
- ログハウスの基本形状を認識しておく
- ハンドカット、ポスト&ビーム、マシンカットの違いを認識し、必要なメンテナンスに対応
参考までに1992年に竣工した八ヶ岳の展示企画室は、軒の深い輸入ログハウス(マシンカット)で、今までに給湯器やカラン部品やパッキングなどの設備関係以外は一度も修理したことがなく、自分自身で木材保護塗料や撥水剤を順番に塗布しています。
※ご希望があれば、建物をご案内します。